月読みの森

笹の葉 さらさら

うふふのふv
GLASS Fermata様(URU様)のところでフリーなのをいいことに頂戴してきましたv
とっても素敵な朝ルルですv

では、どうぞv
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笹の葉 さらさら



笹の葉 さらさら
のきばに 揺れる
お星さま きらきら
金銀砂子





生徒会室に着いたカレンは、その懐かしい歌に思わず扉を開いた姿で目を見開いた。

懐かしい、歌だ。
けれど、驚いたのはそれだけではない。

夕陽の紅に照らされて鮮やかに染まる空間の、窓際に寄りかかるようにして佇むその人を、カレンはよく知っていた。

知っていた、はずなのに。

カレンが知っているルルーシュは斜に構えて世界を皮肉げに見ている学生で、妹が何より大切な兄だった。
そんなルルーシュしか、知らなかった、けれど。

歌うその人の横側はどこか哀しげに、愛おしそうに、儚げで。
波紋のように涼やかに響く声は美しいのに、今にも消えてしまいそうだった。



「ルルーシュくん、日本の童謡、とても上手なのね」



上手、なんていうものではない。

完璧な音程、完璧な日本語の発音であった。

その声に気付いたルルーシュは、振り返って苦笑する。
それは、どこか少しバツが悪そうにも見えて。

きっと本当は、聞かせる気などなかったのだとその表情から分かった。
分かってしまった。
だから、先程の彼が嘘ではない事も自然と受け入れられて。

いつまでも入り口に立っていても邪魔だから、と。
扉を閉めてゆっくりとルルーシュの傍らへ歩いていく。

夕陽の逆光に煌めくその瞳は、微かに揺らいで不安定な光を宿していた。



「七夕の歌よね、それ」
「あぁ、下総院一が作曲し権藤花代と林柳波が作詞した【たなばたさま】だな」
「そうなの?それは、知らなかったわ」



歌の名前すら初耳だったカレンは思いのほか素直にそう返して、佇むルルーシュの隣に並ぶ。

意外に日本通な豆知識を披露したルルーシュは、けれどそれをあまりに当然の事のように言うので厭味は感じられなかった。

それが逆に今は妙に素直に感じてしまい、普段は気に入らないと思っているはずなのに自然と口は会話を続ける。

今を逃したら、もうこの話題を口にする事は無い気がしたから。



「いつから知っているの?」
「……歌自体は7年前に教えてもらった。七夕の事を知ったのもその時だな」
「7年前?ブリタニアで?」
「いや、日本だ。俺達兄妹は開戦前に日本に来たから」
「そう、」



それに納得すると同時に、生じる疑問。

どうして、そんな時期に、と。
あの頃開戦ムードになったこの地に残ったブリタニア人など、ほとんど居なかった。

競うように祖国に帰る彼等とは逆にその頃、いったいどのような事情があって彼等は日本へ来たというのだろう。

と、いうか。



「…今、日本て言った?」
「……っ、」



一瞬、目の前の相手の息が詰まる。
思わずといったように口を押さえた彼は、けれど開き直ったかのように肩を竦めてまた苦笑した。

珍しく今日の彼は失態が多い。
仮面の綻びが見えるのは、先程の歌と何か関係があるのだろうか。



「……俺の親友はスザクだったんだ、そう呼んでいたとしても別に可笑しくはないだろう?」
「じゃあ、今の歌もスザクが教えてくれたの?」
「いや、違う」



反射のようにきっぱり返ってきた否定に、また目を丸くする。
それはまるで、一緒にしないでくれとでも言いたげな口調で。

そういえば、と思う。

彼は、「俺の親友はスザクだった」と言った。
「だった」それは過去形ではないか。



「スザクではないの?」
「あぁ、違う。あいつじゃない」
「じゃあ、誰?」



名誉でなければ生粋のブリタニア人?
名誉ブリタニア人で騎士に指名された彼を良く思わない者は多かった。
もしやルルーシュもそうなのだろうか。
ナンバーズだから、差別を?
例えそれが親友でも?

一瞬過った険呑な気配に、ルルーシュは内心呻いた。

ゼロであるルルーシュは、カレンが騎士団員である事をよく知っている。
そしてその相手と、面識がある事も知っている。
説明して結びつけられると面倒だ。
と、いうのは建前で、知っているだけに何となく気恥かしい。

そんな躊躇いを抱きながら、ルルーシュは言葉を選んで口にする。

思い浮かべたその相手に、無意識に浮かんだ笑みに気付きもせずに。



「醤油好きで、笑顔が素敵なお兄さん、かな」
「……へ?それって、日本の方?」
「少なくともブリタニア人でも名誉でもない、生粋の日本人だな」
「どんな、人?」



生粋の日本人。
その返答に先程の事は勘違いだと分かったカレンは、それより今のルルーシュの反応に驚いた。

カレンはナナリーの事以外で、今までルルーシュがそんな顔をするところを見た事がなかった。
愛おしげで、なのに哀しげで、儚げで。
まるで、先程歌っていた横顔のように。

大切なのだと、それだけは痛いほど伝わってきて。



「大人で子供な人、かな?大人なんだが基本的に子供っぽいんだ。でも、とても頼りになる優しい人だよ」



そういって、さきほど歌っていた時のように窓際に寄りかかって。
そこにいつの間にか飾られていた笹の枝先に結わえられた短冊を、そっと穏やかに指先で撫でる。

のぞき込めばそこには、お手本のように綺麗な文字で、一言。



「【 会 え ま す よ う に 】?」



それが誰の文字かなんて、もう疑問に思う事はなかった。

スザクの字はこれほど綺麗ではないし、他の生徒会役員の皆が日本語を書けるとは思えない。
先程の完璧な発音と会話。
それだけで、それが誰の短冊かなんて、分かってしまった。

懐かしげ細められたその瞳が、何よりそれを物語って。



「約束、したんだ」
「約束?」



再度振り返った彼は、最初と同じく夕陽の紅に鮮やかに染まって。
何故かその紅が鮮やか過ぎて、今は真っ赤な血のようにも見えた。

そこに浮かんだ今にも泣きだしそうな綺麗な微笑みは、息を呑むほど美しくて。



「【ルルーシュ】としてもう一度、戦争が終わったこの地で会おう、って」
「それは、」



どういう意味?、と。
問い掛けるより早く、閉ざしたはずの生徒会室の扉は再び開かれて。

ぞろぞろと他の生徒会役員達が入ってくる。

それを見て窓際から背を離したルルーシュが一歩、彼等の方へ歩き出した。



「なんですか会長、その書類の山は」
「あらルルちゃんっ、ちょうど良かったわ!呼びに行こうと思っていたのよ!」
「リヴァル…は良いとして、ニーナにまでこんなに持たせて」
「て、俺は良いのかよっ!!」



そんなリヴァルの叫びは華麗に全員から無視されて。
ニーナの持ってきた書類の大半をルルーシュが受け取って、少しよろけて。
それにニーナが申し訳なさそうに、ミレイが可笑しそうに笑って。

戻ってきた喧騒。
まるで隔離されたように止まっていた時間が、再び普段通りに流れだす。



「この量、今からやったら終わりませんよ?」
「あら、ルルちゃんが本気出してくれれば片付くじゃない♪」



当然のように胸を張るミレイに、ルルーシュは溜息を吐いて振り返る。
そこにあった表情は、いつもの皆が知る生徒会副会長のルルーシュ・ランペルージそのもので。



「病弱なカレンさんは今から病院だろう?先に帰ったらどうだ?」
「っ、……そうね、そうさせてもらうわ。ひ弱なルルーシュくんも今日は会長のいう本気を出して早く帰った方が良いわよ」
「残念。会長の仕事を減らすのは不本意なんでな」



相変わらずの皮肉の応酬に時が戻った事を実感すると、カレンは生徒会の皆に謝って再び出入口へと歩き出す。

本当は病院なんてない。
けれど、黒の騎士団のエースパイロットの仕事は少なからずあるのだ。

扉を閉める前に背後からふと、先程の短冊の話題が聞こえてきて。



「あら、ルルちゃん。今年もそれ飾ったの?」
「えぇ、そうですね。もう7年ですから7回目になりますね」



笹を見つめて童謡を口ずさんでいたルルーシュ。
その、横顔。
さきほどの、会話。

『7年前に教えてもらった』
『約束、したんだ』
『【ルルーシュ】としてもう一度、戦争が終わったこの地で会おう、って』


全てが重なって、カレンは閉ざした扉の前で、自然と口元に笑みが浮かぶのを感じた。


会えますように。


そう書かれた短冊を撫でて愛おしげにその人を語るルルーシュは、きっと素の彼そのもので。

偽りの仮面の向こう側の彼が、カレンは初めて見えた気がした。



「あれ?でも、醤油好きで笑顔が素敵なお兄さん、て……」



一瞬浮かんだへらりとした笑顔と藤堂さんが俺の居場所ですから!と叫ぶその記憶に。

まさかね、と。

少し引き攣った口元を無理矢理戻すと、お嬢様の仮面を被ったカレンは擦れ違う生徒達に弱々しく挨拶をしながら急ぎ足で仲間達の待つ場所へと帰って行ったのだった。


それが真実であったのだと、カレンが知るのは後少し先のお話。



いいなぁぁぁぁぁ
私もこんなの書きたいv

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