月読みの森

愛しのメロウ2

ふったつめv





 二

「…………えと、なんで、出てこないの?」 
 お仕事を続行することを選んだ朝比奈達の前に、今回のお客様の機体が着いた。
 当然中身…失礼、今回のお客様方が、お供を連れてぞろりと降りて見えられる筈…であった。
 が。
 一応、扉は開いた。
 開いたことは開いたのだが、肝心の中身が、待てど暮らせど出てこない。
 だーれも、出てこない。
 パイロットとか、その他諸々の、だーれもだ。
 それに痺れを切らして、ぽつりと呟いてみたものの、それで何かが変わる訳でもなく…。
 相変わらず、猫の子一匹出てこない。
「………朝比奈、ちょっと見てこい」 
 で、藤堂が、何かあったのかも知れないからと、様子を見てこいと命令する。
 実は、それは、事前に命令されていることだったりした。着いても、誰も出てこないから、頃合いを見計らって、朝比奈に様子を見に行かせろと。
 で、それを受けて、若干の不満ー本音はなーんで俺がそんな召使いみたいなことしなくちゃいけないんだと思っているがーを覗かせつつも、確かに着いた途端に何かがありましたでは、地上代表の警備体制を疑われかねない。
 ついでに朝比奈に命令したのは、敬愛する上司である藤堂である。
 ので。
「…はーい」
 渋々ながらもよい子のお返事をして、中に入っていく。
 それを見て、流石に一人では何かあった時に対処が出来ないだろうと、千葉が後を追おうとした。
 が。
「中佐?」
「一人で行かせろ」
 藤堂が、腕を掴んで止めた。
 それに、何故…? と問えば、ただ、黙って首を振るだけだった。
 だが、その表情に何かを感じたのか、その命令に従った。ただ、同僚の幸いを祈って。 
 後には、
「健闘を祈る」
 そんな藤堂の呟きだけが風に舞っていた。


 で、同僚と上司の祈りを受けてブリタニアの機体の中へと入っていった朝比奈であるが…。見事なまでに、迷っていた。
 それも仕方のないこと。
 何せ、仕様が全く違うのだから。
「なんで、誰もいないの?」
 ついでに、目につくところに手当たり次第に入っても、誰もいない。
「まさか、無人だとか言う落ちはないよね?」
 そんなことまで思ってしまうほど、機内には人気がなかった。
 そんな中で…。
「あれ?」
 いつの間にか、奥の方まで来ていたらしいのだが、ふと、何かが目の端をかすめた。
 一瞬のそれに、何故か心が惹かれる。
 その想いのままに、そちらへと向かえば。
「え? な、なに?」
 そうして辿り着いたところにあったのは、何かの装置だった。よく見えないながら、中に何か…誰かがいるのが見えて、好奇心のままに確認しようとすれば。
「うわっ」
 いきなり、装置の蓋がゆっくりと開き始めた。
 そうして、中をのぞき込んでみれば…。
「え? る…る…?」
 そこにいたのは、水のようなものに浮かび、白い簡素な衣服を身に纏っていたのは。
 …成長してより綺麗になってはいるけれど、面影がある。間違いなく、七年前に自分と誓いを交わした相手…ルルであった。
 何でこんなところにとか、いろいろと疑問はあるけれど、取り敢えず再会できたことに喜んで…。
 …………あれ?
 と、そこでひとつの疑問にぶち当たる。
「えと、おんなの、こ?」
 この顔は、確かにルルだ。
 あの時は子どもだったけれど、間違うはずもない。
 また、彼がブリタニアの民であることはその時に聞いたから知ってる。
 だから、ここにいるのはー疑問はあるけれどー分からなくもない。
 けれど。
 間違いなく、あの子は、男の子だった筈。(…一応確かめている…方法は、内緒v)
 しかし、己の目の前で不可思議な装置に横たわるのは、紛れもなく女性。骨格もそうだし、胸のふくらみもそれを示している。
 それに、迷う。
 この子は、一体…と。
 けれど。
 自分の心が告げる、女性であろうと何であろうと、ここにいるのは、ルルだと。自分が愛した存在であると。
 だから。
「ルル…、ルルーシュ。
 約束…だった、よね」
 七年前、別れる時に、朝比奈がルル…ルルーシュと交わした約束。
 …今度逢った時には、恋人のキスをして欲しい(あの時は、相手が十歳であったため、軽いフレンチキスのみだった)と。
 その約束を、今果たそう。
 そっと両手でなめらかな頬を支え、ゆっくりと顔を近づけて…。
 愛しい者に、ずっとずっと焦がれてきたその人に、恋人のキスを送る。
 ゆっくりと柔らかな唇を味わい、そっと離れれば…、眠る人のまつげが揺れる…。
「ん…」
 柔らかな唇から、声が漏れる。
「ルル…」
 それに魅せられたかのように、名前を呼べば…。
 この七年、常に焦がれ続けた、綺麗なアメジストの瞳が開かれ。
 朝比奈を映した…。

 チャキッ

 そうしてにこやかに言葉を発そうとした時、何かー感触でしっかりと分かってしまった、銃であるーが背中に押しつけられた感触に、固まってしまった。
 殺気は、ない。
 だが、背中の銃は、動く気配すらない。
 ので、現状認識のためにも、恐る恐る後ろを振り返ってみれば? 
 そこにいらっしゃったのは、今回の賓客様方ー一応書類は送られてきていたので、顔は知っているーお二人様で、にーっこりと笑顔がくっついていたりする。…目が全然笑っていないけれど。
 それに、何故か冷や汗が…。
「しょ…ご…?」
 それに、少しかすれた声で、横たわるルルが不思議そうに問いかける。
 その不安の表れた声音に、これではいけないと何かを返そうとした、時。
「「ルルーシュvv」」
 何故か、後ろのお二人様が、それまでの冷たいにっこり笑顔から一変。心からのにこやかな笑顔と明るい声で、朝比奈の思い人の名を呼んだ。
 なんでとの疑問は。
「…兄上、姉上…?」
 その言葉に解消された。
「「なんだい? ルルーシュv」」
 しかも、それに返される賓客様お二人の態度ーしっかりと朝比奈を排除するかのように前に出ている。(銃はルルーシュから見えないように、隠されたまま照準は朝比奈をロックオン♪)
 ついでに、さりげなくルルーシュの視線から朝比奈の姿を隠していたりするーは…ちょっと、否大分恋人としては許し難い。
 兄とか姉とか、その他諸々、一体どういう事かと思うことは多々あるけれど。今は、それよりも優先すべき事がある。
「ルル、逢いたかったよv」
 にこやかな笑みと共に声を発し、賓客お二人さんを牽制して前に出る。
 そして。
 未だ機械の中に横たわる愛しい恋人をそっと抱き起こし腕に抱く。
「「!?※$%&」」
 なんか音のしない意味不明の言葉と共に、後ろで二種類の殺気ーどっちも凄まじいですーが吹き出しているが、気にしないv
 だって、腕の中の愛しい恋人は、嫌がってないーだからこそ、殺気の元凶お二人さんも、何にも出来なかったりするーからv
 なんか、後でこわいことになりそうな予感はひしひしとするけれど。
「…省吾、待たせて…ごめん…」
 この言葉に、報われたv
 だって、謝ると言うことは、自分の事を思っていてくれるということだから。
 だから。
 諸々の疑問や面倒ごとは遙か彼方に放り投げて。
「愛してるよ、ルルv」
 気にしていないよとの意味を込めて、愛を囁き、約束していたー先刻は意識がなかったからーキスを送るv
 

 そして暫し、二人は周囲を忘れたv




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